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そばきり長助

2020.09.12    観光スポット周辺情報

武家町に建つ農家のそば屋

 角館駅から約1キロ、武家屋敷通りから西側に一本入ると、暖簾を掲げた木造建築が目に留まる。手打ちそばの店、そばきり長助だ。

 今年で創業十五年目を迎えるそばきり長助は、仙北市内で自家栽培したそばの実を自ら挽いてそばを打ち提供する「農家のそば屋」。店の入り口には「地産地消応援の店」の文字が飾られている。

 そんなそばきり長助オープンのきっかけは、栽培を始めたそばの実が思うように売れなかったからだという。当時秋田県で手打ちそばを出す店がそれほど多くはなかったからだ。「これはもう自分で店を出すしかない」との思いで始まったのが、自家栽培したそばの実で手打ちそばを作る「農家のそば屋」だったそう。そばきり長助の名前は屋号から、というのもまた、農家らしい。

 農家のそば屋の一番の強みは「鮮度」。そばはとてもシンプルな食べ物であるが故に、素材の味がそのまま料理に出る。そばきり長助では、前日の夜から当日の朝の間に挽いたそばが提供されている。その違いは、一目…いや一食瞭然。頂いた十割そばは、つなぎを使っていないということが信じられないほど粉っぽさがなく瑞々しい。口に入れると鼻にそばの香りが抜け、甘みも感じられる。これがまさに鮮度のなせる業なのだろう。

優しい笑顔の大黒柱 鈴木秀夫さん

 今回取材に対応してくださったのは店主の鈴木秀夫さん。見るだけで人の良さが伝わってくるような優しい笑顔をみて、そばきり長助で提供されるそばが美味しい理由がまたひとつ、わかったような気がした。

 ふと周囲を見渡すと、そばきり長助の店員さんは皆さん優しい笑顔を浮かべながら仕事をしているように感じた。それもそのはず、店員さんたちは店主の鈴木さんの息子さんたち。農家のそば屋は家族で営まれているのだ。

 そんな店・家族双方の大黒柱である鈴木さんだが、そばを育て始めた理由は「減反政策」だったという。もともと米農家だった鈴木さんは、減反政策によって空いた土地の利用方法を考えていた。その時、知人が南会津から持ち込んだ在来種を使った手打ちそばを食べたことにより、そばに引き込まれていったそうだ。そこで鈴木さんは、そばを少し分けてもらい、空いた土地でのそばの栽培を開始した。

 また、その十年後には、そば研究の第一人者である信州大学の氏原暉男先生との出会いをきっかけに、現在の看板商品である「赤そば」の材料、「高嶺ルビー」とも出会っている。

 米農家から数々の出会いを経て農家のそば屋へと転身した鈴木さん。現在では、「お客さんが喜んでくれることが一番のやりがい」であるとして、お客さんとの出会いも大事にしていることを教えてくれた。

 それらの出会いは偶然ではなく、鈴木さんの人柄が引き寄せたものだろうとインタビューの端々から感じることができた。農家の屋号である「長助」がそば屋の名前としてしっくりくるのもまた、単なる偶然ではないのかもしれない。

赤の衝撃 高嶺ルビー

 そばきり長助で是非食べてほしい一品が、前述した「赤そば」だ。ヒマラヤ地方原産の「高嶺ルビー」から作られるこのそばは、収穫量が少なく育てるのも難しい。なぜそのようなそばを仙北市で育てるようになったのか。

 きっかけは十年ほど前、高嶺ルビーの品種改良に携わった信州大学の氏原暉男先生の講演が仙北市で行われたことだった。その際に氏原先生からたくさんのお話を伺い、ここ、秋田県でも生産できるのではないかということで生産を始めたそうだ。もともと寒い地方で育つ高嶺ルビーは実をつける時期が遅く、花が咲いてもミツバチが飛ばずなかなか受粉できないことも。収穫量もふつうのそばに比べ半分ほどで、その希少さがうかがえる。

 そばきり長助では、種を自家採集することにより、その希少な高嶺ルビーを使った赤そばを破格の値段で提供している。そのそばは、それまでに食べたことのないものであった。味はそばなのだが、食感が讃岐うどんにも近いような独特の弾力があるのだ。

 過酷な栽培条件の中、仙北の地で実を結ぶことに成功した高嶺ルビー。そして、高嶺ルビーを育てる農家のそば屋だからこそできる、絶品の赤そば。そばきり長助を訪れた際は、是非騙されたと思ってその食感を体感してほしい。

文/秋田大学 伊藤

Information

そばきり長助
〒014-0300 秋田県仙北市角館町小人町28−5
☎0187-55-1722
■定休日:火曜日
■営業時間:11:30~16:00

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角館駅から徒歩16分。
 観光を楽しんでお腹がすいたら、腹ごしらえに行きましょう。ざるの上にこんもりと盛られたそばをずるっと一気に口の中へ。コシのきいたそばは、噛めば噛むほど風味が広がり、甘めのそばつゆがそれを引き立てます。

 散策のお供にお持ち帰りできる「そばソフト」もあります。

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